私は南区社協事務所で、小さなお子様からご高齢の方、障がいのある方など、誰もが安心して暮らせる地域づくりに取り組んでいます。
その取組みの一つとして、市社協では、思いやりの心を育み、地域や社会にある課題に気づき、考えることを目的に「福祉体験学習」を実施しており、令和6年度、私の担当校区では4校区の小・中学校で実施しました。
「福祉体験学習」では、主に車いす・アイマスク体験(障がい者疑似体験)の指導を行ない、ユニバーサルデザインの物品に触れる体験も行なっています。
車いすに乗り自分で操作する体験、アイマスクをつけて歩く体験、またそれぞれ介助する側の体験も行ない、両方の立場を経験してもらいました。
実際に体験した生徒からは、以下のような声が上がりました。
<車いす体験>
・平らに見える道が実は緩やかな傾斜になっていて、まっすぐに進めなかった。
・砂利道ではなかなか進めなかった。
<アイマスク体験>
・周りの状況がわからず、人にぶつかった。
・どこに段差があるかわからなくて怖かったが、声かけがあると安心した。
普段何気なく歩いていた道のりが誰かにとっては歩きづらいかもしれない、といった「気づき」が生まれ、また、介助する側の体験を通して「声かけの大切さに気づいた」という感想もありました。
そして私自身も、指導する立場での気づきがありました。
とある小学校で、私が初めて福祉体験学習を担当した時の出来事です。
車いす体験で走行するコースの中に、一見平らに見えるも、実は左に向かって緩やかな傾斜になっている道がありました。子どもたちは車いすに乗り、まっすぐ進もうと漕いでみるも、どうしても斜めに進んでしまい、操作に苦戦していました。
苦戦する子どもたちに対し、私は「実はこの道、斜めになっているんだよ」「左のタイヤを使うとまっすぐ進めるよ」といった助言をしていました。しかし、その時に先生から「自分たちで気づかせるので大丈夫ですよ」と伝えられました。
この時私は、車いすに乗ってみて気づく道の危険や、こんな時にどうすれば車いすが進むことができるのかを知ってほしくて、つい先走って答えを伝えてしまい、体験から気づく学びの機会を生徒から奪ってしまっていることに気づきました。
そこからは、まっすぐに進む操作方法を教えるのではなく、「じゃあどうしたらまっすぐに進めるかな」といった、子どもたち自身に考えてもらう声掛けを意識するようになりました。
体験コースには大きな柱や段差といった少し危険な場所もありますが、子どもたちが自分たちで考え気づくための機会を奪ってしまわないよう、あえて必要以上の注意や補助をせず、見守るようにしています。
見守りには、地域のボランティアや福祉・介護事業所のネットワークの方など、たくさんの方々が協力して下さいます。私たちだけでは目の届かないところまで見守って下さることで、怪我なく、安全に実施することができました。さまざまな立場の方々に参加していただくことで、地域の大人と子どもたちの顔の見える関係性を作る機会にもなり、横のつながりが広がっていくことに喜びを感じます。
このような「福祉体験学習」が、足が不自由な人、目が見えない人の日常や取り巻く環境について考える機会となり、高齢者や障がい者だけでなく地域社会で暮らすさまざまな人たちの立場に立って考える視点を持つ「きっかけ」になることを願っています。
地域づくりは、私たち区社協だけでなく、校区社会福祉協議会、民生委員などの地域のボランティアや、福祉事業所、企業、学校、関係機関など、さまざまな方々と連携・協力し、それぞれの強みを生かした取組みを行なっています。
現在、私は5つの校区を担当し、ふれあいサロンなどの地域活動や、校区社協などの会議に出席し、地域の状況や課題把握に努めています。地域によって人口や高齢化率、住環境も異なるため、それぞれ抱える課題は多岐にわたります。
今回、体験した子どもたちが、このような地域や社会にある新たな課題に気づき、それについて考え、「こうすればもっとみんなが暮らしやすくなるのではないか」といった、誰もが安心して暮らせるまちづくりのアイデアを、自ら発信してくれることを願っています。
これからも、「ふ」だんの「く」らしの「し」あわせとは何なのか、「ふくし」について考えていってほしいと思っています。私自身も地域の課題解決に向けて取り組んでいきます。
南区社協事務所
電話番号 092-554-1039
ファクス 092-557-4068
※この記事は令和7(2025)年5月現在のものです。