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活動レポート

孤独・孤立活動レポート

「親亡き後」にどう備えるか

障がいやひきこもりなど、生きづらさを抱えている人の親にとっての最大の不安は、「親亡き後にどう備えるか」です。

私たちは、その不安を軽減するため「親亡き後のお金で困らない準備」について、まずは今あるしくみのメリット・デメリットを洗い出すことから始めました。

「親がお金をどう残すか」では、銀行などの専門機関を通さず親が財産を信頼できる人に信じて託すしくみや、同じしくみの金融商品について検討しました。
同時に、「お金の管理」では成年後見制度(※1)と日常生活自立支援事業(※2)の利用についても検討しました。

判断能力が不十分な障がいのある人の権利擁護のしくみの一つに『成年後見制度』があります。
これは家庭裁判所に申立てを行ない、成年後見人等が選任され、本人の意思を尊重しながら法的に支援する制度で、後見人等は本人に代わり財産管理や身上保護(※3)を行ないます。

※1 成年後見制度の詳細についてはこちら→「福岡市成年後見推進センター
※2 日常生活自立支援事業の詳細についてはこちら→「日常生活自立支援事業
※3 身上保護:受益者の心身の状態や生活の状況に配慮して、本人の意思や意向、希望等を尊重しながら必要に応じて住宅の確保・サービスの利用契約・施設等の入所契約・治療や入院の手続き等を行なうことにより、安心した生活を支えるしくみ。
                                 
成年後見制度は、「代理権」や「取消権」など付与された権限の行使により権利を守ることができますが、親族が後見人となった場合には家庭裁判所への定期報告事務が非常に煩雑であり、専門職が後見人等となった場合には後見人等への報酬が一定額発生するという一面もあります。
いつかは成年後見制度の利用が必要だと感じていても、どのタイミングで申立てをしたらよいのか、判断に迷う方も多くいらっしゃいます。一度、成年後見制度の利用が始まると、途中でやめるのが難しいという難点もあります。

また、親がお金を残すしくみの一つに、『生命保険信託』という金融商品があります。
これは、残された家族の生活を守るため、生命保険でお金を準備し、「どのような順番で、誰に、どのように生命保険金を支払うか」を事前に決めておき、保険金を小分けにして定期的に届けるしくみです。
しかし、このしくみには成年後見制度のような身上保護のサービスがありません。そのため、親亡き後の不安にすべて応えるしくみとは言えません。


親亡き後の悩みに応えるためには、「お金で困らないための準備をどうするのか」「生活の場の確保をどうするのか」「日常生活のフォロー(困った時の支援)をどうするのか」といった3つの悩みに応える総合的なしくみが求められます。

そこで、独自に開発する「身上保護」サービスや「友人的伴走支援」のしくみを生命保険信託と組み合わせることにより、既存のしくみではカバーしきれない、障がい者の「親亡き後」や、いわゆる「8050」問題のニーズに対応する、新たな支援スキームの検討を始めました。

専門家との検討会
支援スキームを検討するにあたり、職能(弁護士・司法書士)・当事者団体・民間企業(生命保険・信託会社)・社協がそれぞれ培ったスキルやノウハウ、そして「想い」を持ち寄り、課題の洗い出しとその対策についてアイデアを出し合っています。
専門家との検討会
当事者団体へのヒアリング【福岡楠の会】

また、ひきこもりの実態や、親が抱く不安について教えていただくために、ひきこもりの子を持つ親の会「福岡楠の会」の協力を得て、へヒアリングを行ない、親亡き後の子の生活を支えるしくみのあり方について一緒に考えました。
※「福岡楠の会」の情報はこちら→ 「福岡楠の会ホームページ

【ヒアリングでのご意見等】 ※「楠の会だより №241」より抜粋
●ひきこもりの人は、判断能力が低下した人や認知機能の低下した人は少なく、人とコミュニケーションすることが苦手な人が多い
●以下のようなさまざまな状態の組合せをケースごとにどう考えたらよいかを教えてほしい
・現在は正常だが、将来、親の認知能力の低下が心配される場合
・ひきこもり者本人が親ともコミュニケーションできない場合
・ひきこもり者本人は親と話し合えるが、家庭外の人との対話ができない場合
●家族信託の利用に際しても、社協が手続きのサポートをし、費用の削減を図る方法を検討してほしい
●しくみづくりの中に、ひきこもりの子が詐欺等の消費者被害に逢わないような装置を仕込んでほしい
●福岡市社協のような動きが全国の社会福祉協議会にも伝わってほしい

スキーム案

こうして、金融・法務・福祉など複数分野を横断した知見に当事者の想いを乗せ、さまざまなしくみづくりを続けています。

スキーム案

親は事前に「生命保険会社」と「信託会社」と契約をして、生前の内に保険金の支払い方を決めます。そして、生命保険の契約者である親が亡くなった場合、信託会社が死亡時生命保険金を預かり、保険金を子に定期的に支払っていきます。

 

このスキームでは、福岡市社協が親の遺言作成や死後事務委任契約などをコーディネートし、親が亡くなった場合は支援員が子のもとを定期訪問し、子の身体・精神状態や生活状況を確認していくことと同時に、「日常生活自立支援事業」等による金銭管理も開始します。

 

また、専門家、当事者や親を交えた第三者委員会(仮称)を設置し、不正を防止したり、適切なタイミングで成年後見制度への移行を検討したりします。
今後について
検討会も回を重ねるごとに、実効性が期待できる支援スキームとなってきています。今後はさらに、当事者目線に立った利用しやすいしくみとなるよう、多様な主体と協働しながら更なるブラッシュアップを図り、実現に向けて歩を進めてまいります。

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