30代のAさんは、いじめをきっかけに中学校から不登校になり、高校には進学しませんでした。親戚の紹介で一度は職に就きましたが、人間関係がうまくいかず、まもなく自宅に引きこもるようになり、その後は就労することなく自宅で過ごしていました。
Aさんは両親と一緒に団地で暮らしていましたが、やがて両親が相次いで亡くなりました。住み替えせざるを得なくなり、これを契機にAさんは、自立を目指して住まいと職探しをスタートさせることにし、福岡市社協の「住まい・まちづくりセンター」を訪れました。
「住まい・まちづくりセンター」は、約60店の協力店(不動産事業者)や各種支援団体らと連携し、住み替えでお困りのシニアの方や障がいのある方の入居支援や、入居後の生活支援などを行なっています。
センターの職員は協力店にAさんの希望を伝え、物件を探してもらいました。その後、職員は、Aさんと一緒に協力店から提案された数件を内見し、希望する物件に入居が決まりました。
さらに、職員はAさんの区役所等の手続きにも同行し、Aさんは規則正しい生活リズムに慣れるため、定期的にボランティア活動に参加するようになり、生活の立て直しを始めました。
↓内見に同行し、入居が決定
近年、私たち「住まい・まちづくりセンター」には、住み替えの相談が増えています。
住み替えを希望する理由は「配偶者が亡くなったため部屋が広すぎる」「家賃が払えなくなった」「階段がつらい」「就労先に近い場所に引っ越したい」「立ち退きになった」「独立して自立した生活をしたい」など、さまざまです。
皆さん、不動産業者に行ってご自分で探されるのですが、「孤独死に対する不安」「保証人がない」「近隣トラブルへの懸念」といった理由で入居を断られてしまい、私たちのもとに相談に来られます。
Aさんは長期間「引きこもり」状態でしたが、親戚のすすめで市社協の「住まい・まちづくりセンター」に相談したことが契機となり、自立した生活を目指して職探しにつながったと思われます。
住まいは生活の基盤であり、Aさんのように「住まいを確保する」ことから自立した生活につなげることができると思います。
こうした「住まい」の問題で困っている人たちが入居を断られる理由には、誤解や偏見もあります。それらをなくすため、私たちは協力店の不動産業者などを介して、関係者に借りたい方の生活の様子や利用している福祉サービス・機関などを説明しています。また、必要に応じて入居後の支援を行なう場合もあります。
「この人がうまくいったから、この人もうまくいく」ということはなく、支援の仕方は同じでありません。そこに難しさを感じます。今後も他の専門職や関係機関と協業・連携しながら、住まいの確保に困っている方の支援を展開したいと考えます。
(住まい・まちづくりセンター 相談員 瀬戸山 淳)
住まい・まちづくりセンター
電話番号 092-720-5356
ファクス 092-751-1509
※この記事は令和4(2022)年7月現在の情報です。
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※「住まいを確保できない」の記事もご参照ください。→こちら