認知症や知的障がい、精神障がいのある方が、地域で安心して生活を送ることができるよう、市社協は「日常生活自立支援事業」を行なっています。
この事業は、各区に配置された専門員と支援員がご本人との契約に基づいて福祉サービスの利用援助や日常の金銭管理、書類預かり等を行ないます。
例えば、「福祉サービスを利用したいが、手続きの仕方がわからない」、「日々のお金の管理がうまくできず、赤字が続いている」、「訪問販売等で不要なものを買ってしまい、対処の仕方がわからない」といった方々の支援を行ないます。
※事業の詳細は→こちらを参照
↓利用者のご自宅を訪問する高丘専門員(中)と竹本支援員(左)
専門員と支援員の役割は異なり、専門員はご本人の意思を尊重しながら福祉・医療の関係者と今後の支援の仕方について話し合いを行ないます。認知症が進んだり、身体的な衰えから自宅での生活が難しくなったりすれば、施設への入居や成年後見制度への移行が必要になるため、専門員はそれらの手続きを関係者と協力しながら支援します。
支援員は主に銀行で出金や支払いなどの実務を担当し、自宅を訪問して生活の様子に変化などがあれば専門員と情報を共有します。専門員、支援員が支援内容を確認しあい、関係者と連携を取りながら支援を行ないます。
↓ケアマネジャー(左端)ら関係者と連携する
Aさんは現在80代後半で、夫に先立たれて一人暮らし。主に年金で生活しています。認知症を患い、最近のことは忘れがちです。姪と交流がありますが、姪は遠方に住んでいて家庭があり、Aさんの支援は頻繁にはできそうにありません。日常の買い物や食事の用意はホームヘルパーの支援を受けています。
Aさんは認知症によって生活費のやりくりができなくなり、公共料金の支払いが遅れたり、生活費が足りなくなったりすることが増えました。今後の生活を不安視したケアマネジャーから相談を受け、市社協はAさんと契約。Aさんが安定した生活を送れるように、Aさん、ケアマネジャーと収支計画などを話し合い、専門員や支援員が自宅を月に1回訪問して収支報告をし、心配ごとなどの相談に乗ることになりました。
↓郵便物などを確認する
約束の日に高丘専門員と竹本支援員はAさんのお宅に伺いました。訪問を重ねるうちにAさんは社協に大きな信頼を寄せるようになり、専門員・支援員の訪問を心待ちにしています。ケアマネジャーも同席し、室内は賑やかになりました。
高丘専門員、竹本支援員はAさんに日々の様子を尋ねながら、顔色や体調、身なり、室内の様子に変化がないか、確認します。また、ご本人に生活費をお渡しし、前月のホームヘルパーによる買い物代や光熱費の引き落としの確認をします。
電気代や下水道代が前月より極端に高くなっていれば、機器の故障、Aさんの消し忘れなどが考えられ、数字の変化はAさんの行動の変化、認知症の進行などを知る手がかりになります。高丘専門員と竹本支援員は小さな変化を見逃さず、ケアマネジャーと情報を共有します。
Aさんに収支や郵便物の内容を説明し、翌月の予定などを伝えると、Aさんは安心した様子で部屋に飾っている写真について語り、昔話に花が咲きました。
↓利用者に収支を伝える
専門員は支援員と共に、ご本人の気持ちを常に確認し、今まで生活してこられた背景を尊重して、その方らしい生活が送れるように日々、関係者と連携を図りながら支援を行なっています。
ご本人の希望を叶えることが難しい状況の時もありますが、その時は再度ご本人と対話し、関係者も含めご本人にとって最善の方法を検討するようにしています。
Aさんのような高齢の認知症の方は徐々に記憶や理解力が低下するため、契約後は”終活”も視野に入れながら支援を行なうことになります。もし病気になったら入院の手続きをどうするのか、万一の時に家財をどうするのかなど、今後予想される課題を想定します。
このような課題に対する手続きや後見制度への移行などは、基本的にご本人の意思を確認しながら進めるため、ご本人が理解できるうちに考える必要があります。どのタイミングでどのように話を進めていくのか、いつも悩みますが、そんな時こそご本人と対話することを忘れず、「安心して、その方らしい生活が送れること」を念頭に置き、関係者と連携しながら支援を続けていきます。
(あんしん生活支援センター 専門員 高丘 詞子)
あんしん生活支援センター
電話番号 092-751-4338
※この記事は令和4(2022)年9月現在の情報です。