福岡市社協が主催する講座やイベントの多くは、区市民センターなどの公共施設で行なわれています。「誰もが知っている大きな施設」は広報しやすく、設備も整っているため便利です。
しかし、区のエリアは広く、住まいによっては「公共施設まで遠くて行けない」「坂が多くて行き来が困難」「交通機関がない」という方もいらっしゃいます。また、家族を介護している方は家を長時間空けることができず、「参加したくても参加できない」という声もよく耳にします。
そのような意見から今後は、地域の集会所のような「近くの場所に小さく集まる」場所を福祉活動の拠点の一つとしていくことが望まれます。
そこで地域を回ってみたところ、「寺社」が拠点となりうるのではないかと考えました。繁華街の天神を含む中央区は、福岡における“都心部”というイメージが強いのですが、福岡城の城下町として発展してきた歴史があり、今も寺社が数多く残っているからです。
寺社は宗教の教えから住民の「困り」を「救う」という精神を持ち、人々の心の支えとなり、相談機能も持っています。これは私たちが行なう地域福祉活動の理念と共通します。また、寺社は広い敷地を持ち、コロナ感染対策が取れる広い部屋もあります。
実際に境内や社務所が地域に開放され、のみの市のようなイベントや、地域の会合が行なわれている寺社もありました。
中央区社協は、家族を介護している「介護者の集い」を開くにあたり、参加者から距離が近く、交通アクセスのよい浄満寺(中央区地行)に会場の使用について相談。ご住職に快諾していただき、令和3(2021)年3月15日、「中央区家族介護者のつどい」を開催しました。
当日は、ご住職が「ここは仏様が見守ってくださる場所なので安心して楽しく過ごしてください」とあいさつ。いつもとは少し違う、お寺ならではの“安らぎ”のようなものを感じながらのスタートとなりました。
↓寺院の一部屋を借り、コロナウイルス感染対策をして実施
その後、参加者の皆さんは、化粧品会社社員によるストレッチやハンドマッサージの講座を受け、お互いの介護について話をして過ごしました。中には涙ぐみながら話したり、他の方の話を聞いて安心したり、笑いあう姿も見られました。
↓介護経験のある化粧品会社社員らが講師として参加。美容のためのストレッチやセルフマッサージを教わりました
ご住職・坊守がご家族の介護をしていることも、開催のきっかけとなった今回のつどい。寺院での開催は、日頃、地域活動にご縁のない人へ活動の存在を知らせる効果や、外からは見えづらい寺院の福祉活動を知る機会、他地域からの参加のきっかけなど、さまざまな可能性が感じられました。
寺院には“葬儀”や“お墓”などのイメージを浮かべがちですが、歴史的に地域の教育・福祉・文化振興の拠点等の役割を担ってきており、現在も相談等を通じ檀家、信徒などを問わず、すべての人の“心の救い”の場として活動するところが多くあります。
中央区社協事務所
電話番号 092-737-6280
※この記事は令和3(2021)年5月現在の情報です。