発熱で受診した病院でアルコール依存と診断され、入院中のAさん(50代男性・独身)。退院後の生活および通院治療に向けて病院職員が自宅の1Kアパートを訪れると、玄関から酒の空き缶や瓶があふれ、室内は腰の高さまでゴミが山積み。まさにゴミ屋敷状態でした。
Aさんのゴミ屋敷状態は6年ほど前から。ハードワークにより家の片付けがおろそかになり、コロナ禍で在宅時間が増えると共に飲酒量が増加し、アルコール依存症を発症しました。片付けたい気持ちはあっても、どこから手をつけていいかわからない。放ったままにし、最近はゴミのあふれた家に帰らず、友人宅を転々としていました。
Aさんはなかなか職が安定せず、困窮が続いていました。片付けは1人でできず、だからといって業者に清掃を依頼する費用はありません。遠方に住む両親は高齢で、ゴミの運び出しを手伝えるような親族もいません。最近は腰を痛め、これまでのような仕事もできそうになく、Aさんはゴミのたまった部屋を前に、退院後の生活の見通しを立てられずにいました。
福岡市社協はAさんの片付けに対する気持ちを汲み、片付け支援を行なうことに。病院職員や福祉施設、事業所ネットワーク、民生委員等と、片付けやゴミの運搬方法、清掃後の見守りなどを協議し、片付けを手伝うボランティアも募りました。
方向性が決まったところで、Aさんと社協職員、病院職員、延べ28名のボランティアで片付けを行ない、収集したゴミは150袋にも上りました。それらを福祉施設の車両で福祉施設に運んで仮置きさせてもらい、「ふくおかライフレスキュー」(※注)を利用して処分しました。その後、専門業者に清掃を依頼し、数日に渡った片付けは無事終了しました。
Aさんは、今後の生活に対する安心感と意欲を取り戻し、病院や民生委員等による定期的な見守りを受けながら在宅生活を送っています。
「ゴミ屋敷」は、体の不調、心の病、認知症、知的・発達障がいなどを遠因に、本人が身の回りに気を配らなくなることで発生しがちです。社会的な関わりも断ち、孤立・孤独に陥って周囲から見えにくくなります。今回のケースは、病院からの相談によってゴミ屋敷が発覚し、支援につながりました。
Aさんが新たな生活をスタートできたのは、ご本人に片付ける意思があり、福祉施設や事業所ネットワーク、民生委員、医療ソーシャルワーカー、ボランティアと連携が取れたからです。
多くの人々との関わりが、Aさんの片付けへの参加や、今後の生活に対する安心感、意欲の向上につながったのだと思います。夏の盛りに汗びっしょりになって片付けをしてくださった有志の皆さんに感謝いたします。
生活保護や貸付といった「制度」からもれるケースは多々あります。専門職の立場での支援、制度を利用した支援には限界がありますが、関係機関で検討を重ね、連携していくことで「人による支援」につながっていくこともあります。今回のケースでは、そういった「人とのつながり」をより一層感じました。
今後も関係機関それぞれができることを確認しながら連携し、「制度のはざま」にいる人々を支援していきます。
南区社協事務所
電話番号 092-554-1039
※この記事は令和3(2021)年10月現在の情報です。