コロナ禍による自粛生活の長期化や、緊急事態宣言の発令による福祉活動の制限等により、「外出する機会が減り、筋力が低下した」「人との会話が減り、うつ傾向になっている」といった高齢者が増えています。
この課題に対応するため、福岡市社協では、非対面の見守りや交流を実現するツールとして、「はなれてもつながる」アプリの開発を行なっています。
開発で心がけたことは「高齢者でもわかりやすく、使いやすいアプリ」にすること。タブレット端末の画面に触れるだけで簡単につながるよう、工夫しています。
具体的には、あらかじめ上限5人までのグループを設定し、「みんなで通話」アプリのボタンを押せば、グループ間でビデオ通話ができます。これまで公民館や集会所に集まって行なっていた会食や会合も、自宅にいながら行なえるというわけです。
開発当初、グループ間での会話のみを想定していましたが、「タブレット端末を有効活用できないか」との意見が上がり、「オンライン講座・教室」や、スクリーンセーバーを利用した「地域行事の案内」「教室の作品展示」などを設定できるよう、改良を重ねています。ゆくゆくは「コールセンターによる健康相談」機能の追加も想定しています。
現在、寄贈された20台のタブレット端末を使って3校区で体験会を重ねており、今後は台数を増やして多くの方々に行き渡るよう計画中です。
◇アプリ開発協力/アウトリーチソリューションズ株式会社
◇タブレット寄贈/株式会社イーサポート
◇技術協力/株式会社輪人
民間企業が積極的にICTを取り入れてリモートワークを導入している中、福岡市社協の地域福祉活動におけるICT活用はやや遅れを取っています。年齢層の高い地域住民の多くは、新しいものに対する抵抗感・恐怖心があるようにも見えます。
対面による交流の素晴らしさは言うまでもありませんが、コロナ禍でそれが制限されている今、何もしないままでは「孤独」は深まる一方です。
「コロナに打ち勝つ斬新なアイデアはないだろうか」「時代に合う新しい文化を取り入れていきたい」「地域住民の皆さんが何かに挑戦できる機会を作ろう」そんな思いでアプリ開発に取り組みました。
開発企業、研究者、医療従事者、地域住民の方々が開発に関わっています。立場が違えば視点は異なり、それをすり合わせていく作業は困難を伴いますが、自分一人では考えつかないアイデアや別の見方に触れる面白さがあり、異分野のメンバーが集まって起こる化学反応も楽しみです。
ここで生まれたアイデアは、コロナ禍に向けたものでしたが、それだけにとどまらないように感じます。体験会で地域住民の方から「骨折してふれあいサロンに来られない方に使ってもらおう」という声が上がったように、このアプリは新型コロナウイルス収束後も重宝するのではないかと思います。遠方の施設に入所した方とオンラインで会話したり、家にいながらサロンに参加したりするなどの、多くの可能性を感じています。
福岡市社協がICTによって始める、地域福祉活動の新たなインフラづくり。それが社会に普及したとき、どんな世界が待っているのか、楽しみでもあります。
(事業開発課 緒方文子)
事業開発課
電話番号 092-720-5356
※この記事は令和3(2021)年7月現在の情報です。